京都大学、高効率太陽電池等にも応用可能な物体からの熱輻射スペクトルの大幅な狭帯域化に成功

 京都大学は、同大学の野田進 工学研究科教授、浅野卓 同准教授、メーナカ・デ・ゾイサ 同研究員等の研究チームが、熱輻射スペクトルの制御による熱エネルギーの有効利用を実証することに成功したと発表した。

 物体を熱することにより発せられる熱輻射は、一般に、極めて広いスペクトルをもつことが知られている。例えば、太陽光スペクトルは、約5800Kの黒体からの熱輻射スペクトルに近く、紫外から赤外に至る極めて広い波長スペクトルをもつ。
 この広いスペクトルのうち、我々は、通常、一部の波長成分のみを利用し、その他の成分は無駄に捨ててしまっている。

 自然エネルギー利用に向けて最近大きな注目を集めている発電方式の一つに太陽電池があるが、広い太陽光スペクトルには、太陽電池が吸収して電力に変換できない波長成分が多く存在するため、一般に光電変換効率は10〜20%程度に留まっている。
 ここで、もし太陽光スペクトルそのものを、エネルギー損失なく、極めて狭いスペクトルへと変換・圧縮出来れば、利用可能なエネルギー成分が増大し、発電効率の大幅な高効率化(>40%)につながるものと期待される。
 
 より一般には、物体からの熱輻射スペクトルを、エネルギーの損失なく、狭帯域の所望のスペクトルへと変換・集中できれば、上記、太陽光発電の高効率化のみならず、地熱等を利用した熱光発電、熱の出ない高効率ランプ、各種分析用高効率赤外光源の実現など、その波及効果は極めて大きいと言える。

 同研究では、このような、物体からの熱輻射スペクトルの制御を可能にする新しいコンセプトの構築とデバイスの試作を行い、さらに、実際にそのデバイスを用いて、外部から投入した電力を極めて狭い輻射スペクトル(黒体輻射の1/30)に集中可能であることを示し、熱輻射スペクトルの制御による熱エネルギーの有効利用を実証することに成功した。

 この成果は、英科学誌ネィチャー・フォトニクスの電子版速報に掲載されたとのこと。