JA全農、農業施設を活用して太陽光発電事業に参入

 全国農業協同組合連合会(以下「JA全農」)と三菱商事株式会社(以下「三菱商事」)は、今年7月1日に施行された再生可能エネルギーの全量買取制度を活用して農業・農村の活性化と再生可能エネルギーの普及を目指し、主に全国の農業者・JAグループ関連施設(大型畜舎等の農業施設、選果場、物流関連施設、食品・飲料工場などJA共同利用施設)の屋根を活用した太陽光発電事業を、共同で推進していくことについて合意したと発表した。

 同事業の推進にあたり、JA全農三菱商事が中心となり合弁会社(JAMCソーラーエナジー合同会社・仮称)を設立し、施設所有者が屋根などを提供することで、発電事業を行う仕組みを構築する。
 この合弁会社を核としながら、総事業費約600億円を投じ、北海道から沖縄まで全都道府県の農業者・JAグループ関連施設を対象として、合計20万キロワット(200メガワット)の太陽光発電システムを、2014年度末までに導入することを計画している。
 これは屋根などに設置する太陽光発電設備を全国的にネットワーク化した画期的な取り組みであり、この形態では国内最大規模になると考えているとのこと。

 また、農業者・JA等が自ら太陽光発電設備を設置し発電事業を行う場合は、JA全農が最適な設備の供給やJAグループ金融機関によるリース商品の開発を行うことにより施設所有者をサポートする。

住友電工、集光型太陽光発電装置を備えたメガワット級大規模蓄発電システムの実証運転を開始

 住友電気工業株式会社は、同社横浜製作所において建設を進めてきた、世界最大規模のレドックスフロー電池と国内最大規模の集光型太陽光発電装置(CPV)等から構成されるメガワット級大規模蓄発電システムがこのほど完成し、7月24日より実証運転を開始したと発表した。

 同システムの開発に当たっては、日新電機株式会社、住友電設株式会社、および株式会社明電舎とそれぞれと連携して推進してきた。
 同システムは、夜間電力や太陽光発電電力を貯蔵するレドックスフロー電池(容量1MW×5時間)と再生可能エネルギー源としてのCPV(28基、最大発電量200kW)、から構成され、外部の商用電力系統とも連系する。また、同システムのCPV発電量、レドックスフロー電池の蓄電量および消費量は、エネルギーマネージメントシステム(EMS)によって監視され、計測データはEMSサーバで一括管理される。

 今回の実証運転の内容と狙いは以下の通り。

(1)
 横浜製作所におけるピークカット運用(最大1MWのデマンド抑制)を行い、これにより、国内で喫緊の課題である電力不足問題の軽減に貢献する。

(2)
 天候に左右される太陽光発電レドックスフロー電池と組み合わせ、計画的な発電を行い、これにより、太陽光発電の価値を高め、導入を促進する。

(3)
 あらかじめ設定したデマンドスケジュールとなるよう電力負荷に応じた放電量を調整し、電力消費のレベルを安定化させることで、必要な発電所の規模を低減する。

(4)
 太陽光発電の激しい出力変動をレドックスフロー電池の充放電で補償することで、出力を平滑化し、これにより、火力発電所の調整負荷が軽減され、系統へ連系できる太陽光発電の規模が拡大する。

また、レドックスフロー電池とCPVに既設のガスエンジン発電機を組み合わせて、横浜製作所全体の電気エネルギーの最適運転を行うFEMS(ファクトリーエネルギーマネージメントシステム)の実証も開始する。同実証は、経済産業省平成24年度次世代エネルギー・社会システム実証事業」として、「横浜スマートシティプロジェクト」の中で株式会社明電舎と共同で行う。
 FEMS実証は、同プロジェクトでは初めてのこととのこと。

JSTと金沢大、ナノロッドシートを用いた高効率有機太陽電池を開発

 科学技術振興機構(JST)は、同機構課題達成型基礎研究の一環として、金沢大学 理工研究域附属 サステナブルエネルギー研究センターの當摩(タイマ) 哲也 准教授らが、有機薄膜太陽電池で既存のバルクへテロ構造を越える新しい構造を開発し高効率化に成功しましたと発表した。

 有機薄膜太陽電池は、光が当たると電子を放出するドナー材料と、放出された電子を受け取って電極まで運ぶアクセプター材料の2種類の半導体材料で構成されている。
 近年、それらを単純積層するのではなく、2種類の材料を混合し、接合界面の増加によって、効率的に電荷分離を起こす「バルクヘテロ構造」が開発され、変換効率の大幅な向上が図られている。
 ところが、この構造も万能ではなく、半導体材料によっては分子同士が重なり合ってしまう凝集が起こるなど適応できないものがあり、また混合層の作製には手間とコストがかかるという実用化に向けた課題を抱えている。

 今回、研究者らは、バルクヘテロ構造を用いずに、これと同等以上の効率が得られる新しい構造の創出に挑戦した。まず、デバイスの基板上に斜め蒸着を用いて、CuI(ヨウ化銅)をナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)の棒状粒子(ナノロッド)の形で散りばめた、山谷構造を持つシートを形成し、その上に、ドナー材料の亜鉛フタロシアニン(Pc)とアクセプター材料フラーレン(C60)を単純積層すると、それらもナノロッドの山谷構造に合わせて成長するため、平坦な基板に比べて結晶性は高くなり、2つの材料間の接触界面も増加する。これは、ナノロッドの作製には、高価な平坦透明電極基板よりも、安価で表面が荒れた基板が適するというコスト面の有用性を示唆している。
 
 さらに、研究者らがこれまでに発見したヨウ化銅と亜鉛Pcの相互作用による分子の配向制御によって、光吸収が増加しており、それらの相乗効果の結果、ナノロッドシートを用いた新構造太陽電池の効率は、単純積層型に比べて3倍の値(4.1%)を示し、従来のバルクヘテロ太陽電池を越えるものであることが確認された。

 これまで有機太陽電池効率化の唯一の選択肢であったバルクヘテロ構造に代わる、材料を選ばず、簡便・安価に作製できる新デバイス構造が開発され、このナノロッドシートは、亜鉛Pcに限らず、他の半導体でも効率向上が確認されており、有機太陽電池全般への応用が期待できる。
 同研究の要素技術は、すでに国内で特許出願されており、今後、企業などとの共同研究によって、早期の実用化の加速を目指していく。

 同研究成果は米国化学会誌「NANO LETTERS」のオンライン版で近く公開されるとのこと。