大日本印刷、太陽電池モジュールの変換効率向上に対応した部材3種の量産を開始

 大日本印刷株式会社(以下:DNP)は、太陽電池モジュールの変換効率向上の動きが国内外で進んでいることに対応し、関連する製品のラインナップを充実させ、量産を開始すると発表した。

 今回量産を開始するのは、高電圧下での電流の漏れ(PID:Potential Induced Degradation:電位誘発劣化)への耐性と紫外線(UV)域の光の透過性を高めた封止材『CVFシリーズ』、絶縁性と長期信頼性を高めたバックシート『NRシリーズ』、裏面電極(バックコンタクト)型の太陽電池に対応した『バスラインシート』の3製品。

 各製品の概要は以下の通り。

1. 封止材『CVFシリーズ』
 現在、欧州の太陽光発電所などで、高電圧下の絶縁不良から“漏れ電流”が発生するPID現象による出力低下が大きな問題となっているが、この原因の一つとして、高電圧・高温度・高湿度などの厳しい条件下で、封止材の水分透過が増えることが考えられている。

 DNPの封止材『CVFシリーズ』はポリオレフィンを用いており、EVA(エチレンビニルアセテート)を使用した製品と比較して約10倍の水分遮断性がある。このため、高温度・高湿度で1,000Vの電圧をかけたPIDが起こりやすい条件下でも、出力低下がほとんどない。また、ポリオレフィンはEVAよりも短時間でラミネートできるため、太陽電池メーカーは生産性を向上しつつPID現象が起こらない太陽電池を生産できる。

 さらに、EVAは、短波長(300ナノメートル前後)のUVが当たると分解されて黄変や酸性ガスを発生することがあるが、CVFシリーズではこの現象が起きにくく、幅広い波長域の光の透過性に優れている。このため、UV域の波長も発電に利用することが可能で、太陽光を有効活用する新たな高効率セルに使用して発電効率を向上させることができる。

2. バックシート『NRシリーズ』
 太陽電池モジュールは効率の向上にともなって高電圧となるため、バックシートには高い絶縁性が求められることから、DNPは、従来の数倍に絶縁性を高めたバックシートを開発した。

 この製品は、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)を用いており、絶縁性だけでなく難燃性も高く、高温度・高湿度下の長期信頼性評価で、従来の10倍以上の耐久性を有している。

 2012年2月に太陽電池モジュールの信頼性保証体制に関するJIS Q8901が制定されるなど、長期間の製品保証ニーズが高まっており、この動きにいち早く対応した長期信頼性タイプの製品となっている。

3. バスラインシート
 裏面電極型結晶太陽電池は、太陽電池セルの表裏両面にあった集電用の電極を裏面に集約し、表面の電極をなくして受光面積を増やすことで発電効率を高めることができるが、セル裏面にプラス・マイナスの電極を形成する必要があり、太陽電池モジュールの生産工程が複雑であることが課題となっていた。

 この課題の解決に向けてDNPが開発したバスラインシートは、電極の回路パターンをシート上に形成した製品。
 太陽電池モジュールを製造するラミネート工程で、セルに貼り合わせるだけで電極が形成できるため生産工程の簡易化が実現し、また、MWT(Metal Wrap-Through)とIBC(Interdigitated Back Contact)という裏面電極セルの両方式に対応している。